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矢崎節夫館長コラム 「大漁」 2024年6月1日
大漁
朝焼小焼だ
大漁だ
大羽鰮の
大漁だ。
浜はまつりの
ようだけど
海のなかでは
何万の
鰮のとむらい
するだろう。
「金子みすゞ童謡全集」JULA出版局
6月になぜ「大漁」と思われる方もおられると思うのですが、じつはみすゞさんが遺した3冊の詩集を1冊にまとめた『金子みすゞ童謡全集』を読んでいたら、447ページの全集の62ページに、もうこの「大漁」が載っていたからです。もちろん第1童謡集の『美しい町』に入っていることはわかっていたのですが、1冊の全集になってあらためて読んで、「えっ、こんなにはやい段階でもう「大漁」という凄い作品を書いていたんだ!」と、みすゞさんの深いやさしいまなざしに驚かされました。
仙崎は今も変わらない漁港ですが、漁師町で育ったからこそ、いのちに対する深いやさしいまなざしが育ったのでしょう。
生かされていることの不思議さ、いのちをいただいている痛みは、今もやさしさというかたちでこの町全体に残っています。
晴れの日は晴れの日なりに、雨の日は雨の日なりに、町を歩くとやさしく包んでくれます。
令和6年6月1日
金子みすゞ記念館 館長 矢崎 節夫