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矢崎節夫館長コラム 「おはじき」 2021年10月1日
おはじき
空いっぱいのお星さま、
きれいな、きれいな、おはじきよ。
ぱらり、とおはじき、撒きました、
どれから、取ってゆきましょか。
あの星
はじいて
こう当てて、
あれから
あの星
こう取って。
取っても取っても、なくならぬ、
空のおはじき、お星さま。
「金子みすゞ童謡全集」JULA出版局
10月になると空がぐうんと高くなる気がして、思わず深呼吸したくなります。高く思えるのは上空の高い所にできる雲が多いからで、その分、青空が見えやすいのだそうです。
どこにいても、どんなに離れていても、誰の上にも同じ空があると思えると、なんだか嬉しくなります。
暗くなるのが早くなると、記念館から帰る時に、見上げると満天の星空に変わっていて、びっくりすることがあります。みすゞさんの時代にも、もっと多かったでしょう。
この一瞬の変化をみすゞさんは『おはじき』の中で“ぱらり、とおはじき、撒きました、”と表現しているところが見事です。みすゞさんは生まれながらの詩人だったのですね。
まだまだ不自由な日が続きますが、下を向かずに、秋の夜空を見上げてください。きっとみなさんの心にも、青空や美しい星空が広がって元気がでてきますから。
記念館は今日も明るく開館しています。
令和3年10月1日
金子みすゞ記念館 館長 矢崎 節夫