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矢崎節夫館長コラム 「白い帽子」 2019年12月1日
白い帽子
白い帽子、
あったかい帽子、
惜しい帽子。
でも、もういいの、
失くしたものは、
失くしたものよ。
けれど、帽子よ、
お願いだから、
溝やなんぞに落ちないで、
どこぞの、高い木の枝に、
ちょいとしなよくかかってね、
私みたいに、不器っちょで、
よう巣をかけぬかわいそな鳥の、
あったかい、いい巣になっておやり。
白い帽子、
毛糸の帽子。
「金子みすゞ童謡全集」JULA出版局
昭和59年に「金子みすゞ全集」がJULA出版局から出版されて35年、初めて小学生の人たちから感謝状をいただきました。
『あなたはみすゞ作品を十六年間追い続け、私達にみすゞ作品のすばらしさを教えてくれました。よってここに賞します。
沖縄県名護市立久辺小学校六年一組一同
令和元年十一月十八日 』
賞状には、しっかりした文字でこう書いてありました。こちらこそ感謝でいっぱいです。
今、世界13ヵ国で翻訳出版されているみすゞさんですが、日本の小学生の人たちに教科書を通じてきちんと伝わっていることが、なによりも倖せです。
12月は気忙しく、つい忘れたり、失くしたりしがちですし、1年を振り返って反省ばかりになりがちですが、「白い帽子」を読んで、明るく過ごしていただけたらうれしいです。
今年1年ありがとうございます。来年がみなさんにとって幸多い年でありますように。
令和元年12月1日
金子みすゞ記念館 館長 矢崎 節夫