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矢崎節夫館長コラム「王子山」2025年8月1日
王子山
公園になるので植えられた、
桜はみんな枯れたけど、
伐られた雑木の切株にゃ、
みんな芽が出た、芽が伸びた。
木の間に光る銀の海、
わたしの町はそのなかに、
龍宮みたいに浮んでる。
銀の瓦と石垣と、
夢のようにも、霞んでる。
王子山から町見れば、
わたしは町が好きになる。
干鰮のにおいもここへは来ない、
わかい芽立ちの香がするばかり。
「金子みすゞ童謡全集」JULA出版局
勇壮な通のくじら祭りが終わると、仙崎はセミの鳴き声と天空からふってくるトンビのピーヒョロロの声が共演する夏です。
うれしい事に記念館には夏休みの親子連れさんや三世代のご家族がたくさんおいでくださって、みすゞさんの詩の言葉の力に感動します。
今は交通の便もよくなって、宇部空港からなら一時間半、新山口駅なら一時間と、車ならかんたんに来られる日本海側の仙崎ですが、以前は交通の不便な時もあり、かえってその分、みすゞさんがいた頃の仙崎の様子が色濃く残っていて、町を歩いても充分に楽しむことができます。
仙崎八景でみすゞさんがうたっている『王子山』から見る仙崎の町は「王子山から町見れば、/わたしは町が好きになる。」とうたっているように、本当に美しい三角州の仙崎が一望できて、おすすめの場所です。ぜひこちらもおでかけください。
暑さの日々、どうぞご自愛くださいますように。
令和7年8月1日
金子みすゞ記念館 館長 矢崎 節夫