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矢崎節夫館長コラム「失くなったもの」2025年5月1日

ページID:0059759 更新日:2025年5月1日更新 印刷用ページを表示する

失くなったもの

夏の渚でなくなった、
おもちゃの舟は、あの舟は、
おもちゃの島へかえったの。
  月のひかりのふるなかを、
  なんきん玉の渚まで。

いつか、ゆびきりしたけれど、
あれきり逢わぬ豊ちゃんは、
そらのおくにへかえったの。
  蓮華のはなのふるなかを、
  天童たちにまもられて。

そして、ゆうべの、トランプの、
おひげのこわい王さまは、
トランプのお国へかえったの。
  ちらちら雪のふるなかを、
  おくにの兵士にまもられて。

失くなったものはみんなみんな、
もとのお家へかえるのよ。

「金子みすゞ童謡全集」JULA出版局

 5月の空はまぶしいくらいに明るく輝いて見えます。青空に泳ぐこいのぼりを見ると、いくつになっても元気をもらえます。
 子どもの頃、庭にこいのぼりの柱を立てて、一緒に父とひもを引っぱってあげた思い出がよみがえってきます。
 王子山から見る仙崎の町のこいのぼりはだいぶ少なくなりましたが、町を歩くと窓から小さいこいのぼりがあったりして、うれしくなります。そんな時、“いらかの波と雲の波”とつい口ずさみます。特に三番が好きで、自分への応援歌のようです。
 5月の青空の上には、みすゞさんやお嬢さんのふさえさんや、“あれきり逢わぬ豊ちゃんは”と歌った、みすゞさんの大親友の田辺豊々代さんや、ふさえさんの大親友の草場楊子さんもいます。
 そこに一人大事な仲間がふえました。
 今年の5月の青空はとても楽しく、にぎやかで、明るいにちがいありません。


​令和7年5月1日

金子みすゞ記念館 館長 矢崎 節夫

 

 

 


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