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矢崎節夫館長コラム「秋日和」2024年10月1日
秋日和
お天気、お天気、
川辺の梢で、
もずきち高啼く。
乾いた、乾いた、
刈田の刈稲、
榎の掛稲。
続くよ、続くよ、
むこうの街道を
稲積んだ車が。
お天気、お天気、
啼け啼けもずきち、
底なしお空で。
「金子みすゞ童謡全集」JULA出版局
「今年はいつまでも暑いですね」と、いっていた九月でしたが、気がつけば半袖から長袖に、秋はちゃんと来ていました。
『秋日和』なんていい響きの言葉でしょう。
空が澄んで、晴れわたっている様子が目に見えるようです。その澄んで晴れわたっている情景を、“底なしお空”と表現したみすゞさんは見事だなぁと、深く思います。
今年は金子みすゞ全集発刊四十年の記念すべき年で、昨年、グルジア語でも翻訳され、これでみすゞさんの作品は世界十五ヵ国語になりました。驚くべきことだと思います。
いつか、日本の子どもが大人になって、世界に羽ばたいた時に、「金子みすゞ知ってる?」「うん、知ってる」と、みすゞさんの名前や作品が世界の子どもたちの共通語となって、動植物や微生物も含めて、お互いに認め合い、大切にできる時代が必ずくると、信じ続けていきたいと思います。
金子みすゞ記念館の空は、今日も秋日和です。
令和6年10月1日
金子みすゞ記念館 館長 矢崎 節夫