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矢崎節夫館長コラム 「朝顔の蔓」 2024年7月1日
朝顔の蔓
垣がひくうて
朝顔は、
どこへすがろと
さがしてる。
西もひがしも
みんなみて、
さがしあぐねて
かんがえる。
それでも
お日さまこいしゅうて、
きょうも一寸
また伸びる。
伸びろ、朝顔、
まっすぐに、
納屋のひさしが
もう近い。
「金子みすゞ童謡全集」JULA出版局
6月の末になると、父が庭の壁に支柱を立てて朝顔の種をまきます。双葉がでて、本葉がではじめると、日中の暑さはどんどんきびしくなってきます。蔓がずんずん伸びて、朝顔の蕾がつく頃には夏休みです。
「宿題は朝のすずしいうちにやりなさい」といわれても、朝顔の咲いたのが見たくて、赤や青や、紫の花が開いているのを見つけると、なんだかうれしい気持ちがしました。
みすゞさんの「朝顔の蔓」を読むと、少女のテルちゃんが、朝顔の蔓にがんばれ、がんばれと声をかけている姿が浮かんできます。
きっとテルちゃんは道端の草にも、そんな声がけをしたのでしょう。そして、どんな小さい花でも、「きれいだね」と声をかけたにちがいありません。
記念館のつばめも子育てを始めます。
今年は帰ってきたつばめが少ないのが心配ですが、つばめと一緒に元気でお迎えします。
みすゞさんに出会いにおでかけください。
令和6年7月1日
金子みすゞ記念館 館長 矢崎 節夫