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矢崎節夫館長コラム 「空の鯉」 2024年5月1日
空の鯉
お池の鯉よ、なぜ跳ねる。
あの青空を泳いでる、
大きな鯉になりたいか。
大きな鯉は、今日ばかり、
明日はおろして、しまわれる。
はかない事をのぞむより、
跳ねて、あがって、ふりかえれ。
おまえの池の水底に、
あれはお空のうろこ雲。
おまえも雲の上をゆく、
空の鯉だよ、知らないか。
「金子みすゞ童謡全集」JULA出版局
5月が近づくとつい、“お池の鯉よ、なぜ跳ねる。”と、口ずさんでいる自分がいます。
それほどこの作品は、五月晴れのさわやかな空を見上げて口ずさむと、元気がでて、素直な気持ちになれます。
“はかない事をのぞむより、/跳ねて、あがって、ふりかえれ。”とうたい“おまえも雲の上をゆく、/空の鯉だよ、知らないか。”とうたう『空の鯉』は、みすゞさんが私たちにくれた応援歌といってもいいでしょう。
みすゞさんの作品を読むと、「あなたはあなたでいい」といってくれているようで、つい「自分なんて」と消極的になったり、自信を失ったりする時に、心を支えてくれます。
みすゞさんの時代には、王司山から見える仙崎の町には、きっとたくさんの鯉のぼりが泳いでたことでしょう。
今年も燕が帰ってきました。燕のあかちゃんの元気な鳴き声ももうすぐでしょう。
仙崎にどうぞおでかけください。
令和6年5月1日
金子みすゞ記念館 館長 矢崎 節夫