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矢崎節夫館長コラム 「風」 2023年10月1日

ページID:0049738 更新日:2023年10月1日更新 印刷用ページを表示する

空の山羊追い
眼にみえぬ。

山羊は追われて
ゆうぐれの、
曠野のはてを
群れてゆく。

空の山羊追い
眼にみえぬ。

山羊が夕日に
染まるころ、
とおくで笛を
ならしてる。

「金子みすゞ童謡全集」JULA出版局

 毎月、記念館に帰ると、駐車場に出て空を見上げるのが好きです。空は広くて、ピーヒョロロロとトンビの鳴き声が聴こえてきて、なんだか空に吸い込まれていくような、楽しい気持ちになります。
 そんな時、“空の山羊追い/眼にみえぬ。”と、『風』を口ずさむと、子どもの頃きいた「百匹の羊」の話を思い出します。
「百匹の羊を飼っている人がいて、もし一匹の羊が迷子になったら、九十九匹をそこに置いても、迷子の一匹を探しに行く」という話です。子どもの頃は、一匹を探しに行っている間に、九十九匹がいなくなったらどうするのかなと思っていました。
 空の山羊と同じで、羊飼いが目の前にいなくても、九十九匹の羊は「たとえ、そばにいなくても、いつも一緒にいるからね」という羊飼いの言葉を信じて、安心して迷子にはならないのですね。「思い出せばいつも心の中にいる」ことが信じられてうれしいですね。

 

 

令和5年10月1日

金子みすゞ記念館 館長 矢崎 節夫

 

 


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