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矢崎節夫館長コラム 「さよなら」 2022年12月1日
さよなら
降りる子は海に、
乗る子は山に。
船はさんばしに、
さんばしは船に。
鐘の音は鐘に、
けむりは町に。
町は昼間に、
夕日は空に。
私もしましょ、
さよならしましょ。
きょうの私に
さよならしましょ。
「金子みすゞ童謡全集」JULA出版局
12月は1年の最後の月です。1年にさよならする月です。そこで今月は『さよなら』です。
最初の2連は振り返っていっている「さよなら」ですが、3連からは目に見えない音、目には見えても消えていく煙と、視点を広げて、“町は昼間に、/夕日は空に。”と俯瞰していくところが、じつに見事です。
そして最後の2連は“私もしましょ、/さよならしましょ。//きょうの私に/さよならしましょ。”と、一度きりの今日の私に「さよなら」するのです。
この一度きりの今日の私ときちんと思えたから、自分だけでなく、まわりの全ての存在を大切に思えたのですね。
1年の終りの1カ月を大切に過ごし、みすゞさん生誕120周年の来年を明るく迎えたいと館員一同心から願っております。
寒さが厳しくなります。みなさんどうぞくれぐれもご自愛下さって、良い年越しを!!
令和4年12月1日
金子みすゞ記念館 館長 矢崎 節夫