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矢崎節夫館長コラム 「達磨おくり」 2022年10月1日
達磨おくり
白勝った、
白勝った。
揃って手をあげ
「ばんざあい。」
赤組の方見て
「ばんざあい。」
だまってる
赤組よ、
秋のお昼の
日の光、
土によごれて、ころがって、
赤いだるまが照られてる。
も一つと
先生が云うので
「ばんざあい。」
すこし小声になりました。
「金子みすゞ童謡全集」JULA出版局
青空が気持ちのいい10月です。仙崎ではトンビの声と一緒に仙崎小学校の運動会の元気な声が、ひびいていることでしょう。
『達磨おくり』の中でも、みすゞさんの2つで1つのまなざしは変わりません。
“も一つと/先生が云うので/「ばんざあい。」/すこし小声になりました。”
先生は勝った白組の方を向いて立っているのです。だから、勝った白組しか見ていないので、「ばんざあい。」と大きな声で、揃って手をあげることを願ったのです。
でも勝った白組の子どもたちは負けた赤組の仲良しさんを見ているのです。2度は喜びの声はあげられても、3度目の「ばんざあい。」は、負けた友達のくやしさ、かなしさを深く知る白組の子は、すこし小声になったのです。喜びと悲しみも2つで1つなのですね。
相手の方にまなざしを寄せるだけで、私はやさしい人になれるのです。
秋晴れの仙崎へぜひおでかけください。
令和4年10月1日
金子みすゞ記念館 館長 矢崎 節夫