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矢崎節夫館長コラム 「梨の芯」 2022年8月1日

ページID:0041510 更新日:2022年8月1日更新 印刷用ページを表示する

梨の芯

梨の芯はすてるもの、だから

芯まで食べる子、けちんぼよ。

 

梨の芯はすてるもの、だけど

そこらへほうる子、ずるい子よ。

 

梨の芯はすてるもの、だから

芥箱へ入れる子、お悧巧よ。

 

そこらへすてた梨の芯、

蟻がやんやら、ひいてゆく。

「ずるい子ちゃん、ありがとよ。」

 

芥箱へいれた梨の芯、

芥取爺さん、取りに来て、

だまってごろごろひいてゆく。

 

「金子みすゞ童謡全集」JULA出版局

 

 暑い日が続きますが、みなさまお変りありませんか。この異常な気候は人間が自分中心に好き勝手をしてきた結果だともいわれます。

 本当に他の動植物には申し訳ないなと思います。そこで八月は『梨の芯』です。

 “だから”“だけど”“だから”とトントントンと私たちの常識をきちんと支えてくれて、心地良く読んでいくと、さすがにみすゞさんです。

 その後の“そこらへすてた梨の芯、”以後で、私たちの常識を完全にひっくり返してくれます。

 人間の常識は、地球上の他の兄弟からみると、非常識だったのですね。

 行儀がいい、わるいは人間世界だけのことなのだと思うと、なんだかうれしくなりますが、そこから出られない自分がいるのも事実です。

みすゞさんの作品を声に出して自分に読んできかせて、暑い夏を乗り切ってください。
   

令和4年8月1日

金子みすゞ記念館 館長 矢崎 節夫

 

 


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