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矢崎節夫館長コラム 「打出の小槌」 2022年7月1日
打出の小槌
打出の小槌貰うたら
私は何を出しましょう。
羊羹、カステラ、甘納豆、
姉さんとおんなじ腕時計。
まだまだそれよりまっ白な、
唄の上手な鸚鵡を出して、
赤い帽子の小人を出して、
毎日踊りを見ましょうか。
いいえ、それよりおはなしの、
一寸法師がしたように、
背丈を出して一ぺんに
大人になれたらうれしいな。
「金子みすゞ童謡全集」JULA出版局
記念館の感想ノートを見ると、ほとんどの方が“みすゞ”と書かずに“みすゞさん”と書いてあります。記念館に入って来られて出るまでに、頭で理解していたみすゞさんの作品が深く心にとどいて、いつの間にか“みすゞさん”と優しく、きれいに名前を呼びたくなるのでしょう。
物を書く人間の中には、かんたんに“みすゞ”という人がいますが、一般の人の方がみすゞさんの作品にすなおに反応できるのでしょう。人の呼び方で、その人の心柄が見えるような気がします。
『打出の小槌』の中の“大人になれたらうれしいな。”の大人は、きっと心柄のきれいな人のことだと思います。
ようやくコロナの影響も少なくなって、遠くは北海道や秋田、大分や鹿児島からとたくさんのお客さまをお迎えできるようになりました。笑顔とやさしい言葉で、みなさまをお迎えしたいと館員一同、お待ちしております。
令和4年7月1日
金子みすゞ記念館 館長 矢崎 節夫