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矢崎節夫館長コラム 「足ぶみ」 2022年4月1日
足ぶみ
わらびみたよな雲が出て、
空には春が来ましたよ。
ひとりで青空みていたら、
ひとりで足ぶみしましたよ。
ひとりで足ぶみしていたら、
ひとりで笑えて来ましたよ。
ひとりで笑ってして居たら、
誰かが笑って来ましたよ。
からたち垣根が芽をふいて、
小径にも春が来ましたよ。
「金子みすゞ童謡全集」JULA出版局
春です。みすゞさんは春のわくわくさをとても見事に『足ぶみ』でうたっています。
”わらびみたよな雲が出て、/空には春が来ましたよ。”と声に出して読むだけで寒さでかたまった心とからだが、コトコトとうれしい方へ、明るい方へ動いていくような楽しい気持ちになります。
そして、このうれしさ、楽しさは一人で留まることはないのです。こだまになって、みんなに広がっていくのです。
”ひとりで笑ってして居たら、/誰かが笑って来ましたよ。”
うれしさや楽しさは、人だけでなく木や草や、空や海、私たちのまわりに波紋になって広がっていくのですね。今、一番つらい体験をしている国の人たちにも、一刻も早く春がとどくことを心から願っています。
今月で開館19年目に入ります。ホッとできる場所でありたいと館員一同お待ち申し上げます。
令和4年4月1日
金子みすゞ記念館 館長 矢崎 節夫