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矢崎節夫館長コラム 「見えないもの」 2021年11月1日
見えないもの
ねんねした間になにがある。
うすももいろの花びらが、
お床の上に降り積り、
お目々さませば、ふと消える。
誰もみたものないけれど、
誰がうそだといいましょう。
まばたきするまに何がある。
白い天馬が翅のべて、
白羽の矢よりもまだ早く、
青いお空をすぎてゆく。
誰もみたものないけれど、
誰がうそだといえましょう。
「金子みすゞ童謡全集」JULA出版局
みすゞさんのお嬢さんふさえさんは、今月95歳になられます。私たちにとって、ふさえさんはいらして下さるだけでありがたい存在ですね。そのふさえさんが今回のコロナ禍で「大震災や大戦の経験のある私でも、相手が目に見えないだけに一番怖いです」とおっしゃっています。
一番怖いのは目に見えない脅威なのですね。
でも、考えてみると、他の人にうつしたくないから、自分がうつりたくないという気持ちが生まれただけでも、大きな成長です。自他一如、“あなたとわたし”どちらも大切と思えるようになっただけでも、うつむきがちな精神をひっぱり上げる事が出来ますね。
目に見えないものにいつも目を向けていたみすゞさん。
今月の詩は「見えないもの」です。声に出して、どうぞゆっくりおたのしみください。
マスクはしててもみんな笑顔でお迎えしようと、館員一同お待ちしています。
令和3年11月1日
金子みすゞ記念館 館長 矢崎 節夫