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矢崎節夫館長コラム 「見えないもの」 2021年11月1日

ページID:0037722 更新日:2021年11月1日更新 印刷用ページを表示する

見えないもの

 

ねんねした間になにがある。

 

うすももいろの花びらが、

お床の上に降り積り、

お目々さませば、ふと消える。

 

誰もみたものないけれど、

誰がうそだといいましょう。

まばたきするまに何がある。

 

白い天馬が翅のべて、

白羽の矢よりもまだ早く、

青いお空をすぎてゆく。

 

誰もみたものないけれど、

誰がうそだといえましょう。

 

 

 

                                      「金子みすゞ童謡全集」JULA出版局

 

 

 

 みすゞさんのお嬢さんふさえさんは、今月95歳になられます。私たちにとって、ふさえさんはいらして下さるだけでありがたい存在ですね。そのふさえさんが今回のコロナ禍で「大震災や大戦の経験のある私でも、相手が目に見えないだけに一番怖いです」とおっしゃっています。

 一番怖いのは目に見えない脅威なのですね。

 でも、考えてみると、他の人にうつしたくないから、自分がうつりたくないという気持ちが生まれただけでも、大きな成長です。自他一如、“あなたとわたし”どちらも大切と思えるようになっただけでも、うつむきがちな精神をひっぱり上げる事が出来ますね。

 目に見えないものにいつも目を向けていたみすゞさん。

 今月の詩は「見えないもの」です。声に出して、どうぞゆっくりおたのしみください。

 マスクはしててもみんな笑顔でお迎えしようと、館員一同お待ちしています。

 

 

                                      令和3年11月1日

                                      金子みすゞ記念館 館長 矢崎 節夫

 

 


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