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矢崎節夫館長コラム 「お勘定」 2021年7月1日
お勘定
空には雲がいま二つ、
路には人がいま五人。
ここから学校へゆくまでは、
五百六十七足あって、
電信柱が九本ある。
私の箱のなんきん玉は、
二百三十あったけど、
七つはころげてなくなった。
夜のお空のあの星は、
千と三百五十まで、
かぞえたばかし、まだ知らぬ。
私は勘定が大好き。
なんでも、勘定するよ。
「金子みすゞ童謡全集」JULA出版局
みすゞさんの童謡の中には、幼いテルちゃんの姿が浮かんでくる作品がいくつもあります。
『お勘定』の中にも、なんでも数えたくなるかわいいテルちゃんがいます。“電信柱が九本ある。”と歌っていますが、当時の仙崎町行政文書の中の道路占用願図画を見ると、本当に九本だったことが分かります。
みすゞさんは単なる空想や想像ではなく、きちんと自分の内面を見つめたり、しっかりとまわりを見つめて歌っている、そこが読む人の心に深くとどくのですね。
今、私たちは何を数えているでしょうか。あれが出来なかった、これが出来なかったと、出来なかったことばかりを数えていてはもったいないです。同じ数えるなら、出来たことを、これから出来ることを数えたら、前を向いて、いえ、空まで向いて、明るい方へ進んでいけること、まちがいなしです。
記念館はお客様の心の明るくなる場所でありたいと、館員一同心から願っています。
令和3年7月1日
金子みすゞ記念館 館長 矢崎 節夫