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矢崎節夫館長コラム 「ぬかるみ」 2021年3月1日
ぬかるみ
この裏まちの
ぬかるみに、
青いお空が
ありました。
とおく、とおく、
うつくしく、
澄んだお空が
ありました。
この裏まちの
ぬかるみは、
深いお空で
ありました。
「金子みすゞ童謡全集」JULA出版局
みすゞさんは私たちのまなざしをひっくり返してくれる天才です。その上、ひっくり返された方は、新しい発見に新世界を見るような驚きと喜びでいっぱいになります。
ぬかるみはきたないと思いがちな私たちに、ぬかるみは深いお空だと気づかせてくれたみすゞさんに感謝です。
ぬかるみよりもっと大きな泥の沼の中から、あの美しい蓮の花が咲くのですから、私たちはいつも自分側からしか見たり、考えたりしていないことがよくわかります。
不安や不自由や不満がいっぱいの今だからこそ、改めて自分の生きてきた道をふり返り、みすゞさんのまなざしを更に多くの方に知っていただけるよう、自分自身を含めて、みんなで顔を前にしっかり上げて進んでいきたいと思います。
心もからだも、あたたかくなるみすゞさんの記念館で、今月も館員一同、心からお待ちしています。
令和3年3月1日
金子みすゞ記念館 館長 矢崎 節夫