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矢崎節夫館長コラム 「ころんだ所」 2021年2月1日
ころんだ所
いつか使いのかえりみち
ここでころんで泣きました。
あの日みていた小母さんが
いまもお店にいるようす。
桃太郎さん、桃太郎さん、
ちょいとお貸しな、かくれみの。
「金子みすゞ童謡全集」JULA出版局
コロナ禍の中で、心も身もちぢこまりがちな時に、みすゞさんの『ころんだ所』を読むと、ついにっこりしてきます。“ちょっとお貸しな、かくれみの。”と歌っていますが、私たちは今、マスクという小さい小さいかくれみのを、みんながつけています。
みんながつけているので、きつねくんやたぬきさんが化けて歩いていても、誰も気がつかないでしょう。マスクをしていると、男性はひげを毎日そらなくても平気ですし、女性もお化粧の手抜きが出来るでしょう。
これはとても楽なことですが、多分、精神の退化につながっていくにちがいありません。年を重ねると体力的に退化しますが、精神の退化は本人の自覚で防ぐことが出来るのです。
みすゞさんの詩は、精神の退化を防ぐ最高の妙薬です。ぜひみすゞさんの詩をお読みください。不安な日々の支えにもおすすめです。
寒さもまだまだ続きますが、館員一同、みなさんのご来館をお待ちしております。
令和3年2月1日
金子みすゞ記念館 館長 矢崎 節夫