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矢崎節夫館長コラム 「梨の芯」 2020年8月1日
梨の芯
梨の芯はすてるもの、だから
芯まで食べる子、けちんぼよ。
梨の芯はすてるもの、だけど
そこらへほうる子、ずるい子よ。
梨の芯はすてるもの、だから
芥箱へ入れる子、お悧巧よ。
そこらへすてた梨の芯、
蟻がやんやら、ひいてゆく。
「ずるい子ちゃん、ありがとよ。」
芥箱へいれた梨の芯、
芥取爺さん、取りに来て、
だまってごろごろひいてゆく。
「金子みすゞ童謡全集」JULA出版局
新型コロナウイルスの広がりや豪雨災害と、日々のなにげない生活がどんなにありがたいものであったか、今更ながらに思いますし、心がいつも不安でドキドキしている気もします。
みすゞさんの詩はそんな時でも、心はもちようと、ふっと気持ちを楽にしてくれます。
『梨の芯』で“芯まで食べる子、けちんぼよ。”“そこらへほうる子、ずるい子よ。”“芥箱へ入れる子、お悧巧よ。”ここまでは「うんうん、そうだね」とうなずきながら読み進めます。でも、その後はうなずいた自分が恥ずかしくなる展開が続きます。
みすゞさんの詩を読むと、地球上の全てはお互いに支え合っていて、人間だけが特別な存在ではないことを改めて思い出せます。
共に生かさせていただいている今という時間を深く心に刻みたいと思います。
金子みすゞ記念館館員一同、心からみなさまのご来館をお待ちしております。是非、ご自分の中にいるみすゞさんにお会いにおでかけください。
令和2年8月1日
金子みすゞ記念館 館長 矢崎 節夫