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矢崎節夫館長コラム 「蛙」 2020年6月1日

ページID:0031238 更新日:2020年6月1日更新 印刷用ページを表示する

 

 

憎まれっ子、

憎まれっ子、

いつでも、かつでも、誰からも。

 

雨が降らなきゃ、草たちが、

「なんだ、蛙め、なまけて。」と、

それをおいらが知る事か。

 

雨が降り出しゃ子供らが、

「あいつ、鳴くから降るんだ。」と、

みんなで石をぶっつける。

 

それがかなしさ、口おしさ、

今度は降れ、降れ、降れ、となく。

 

なけばからりと晴れあがり、

馬鹿にしたよな、虹が出る。

 

 

「金子みすゞ童謡全集」JULA出版局

 

 

 みすゞさんの『蛙』の後半の二行を読むと、落語だなぁと思わず笑いたくなります。

 落語家の桂枝省さんは「雨乞い源兵衛」のまくらで、「人間が人間をやっているのはついこの間で、天気は地球ができた時からずっと天気をやっているので、当たる訳がないのであります」と語っていますが、人間だけでなく、蛙だってそうなのです。それを、石をぶつけられてはたまりませんね。

 みすゞさんは落語を聴いたことはなかったのではと思うのですが、仙崎は豊かな漁師町で、芸事も盛んな土地でしたので、おもしろい小唄などは耳にしていたかもしれません。

 それでも、みすゞさんがゆかいで、楽しい作品を書けたのは、みすゞさん自身がまわりの全てを、やわらかい、深いまなざしで見続けたからにちがいありません。

 待ちにまった記念館の再開もできました。

 少しでもみなさんのホッとできる場所でありたいと、館員一同心よりお待ちしています。

 

                                             令和2年6月1日

金子みすゞ記念館 館長 矢崎 節夫


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