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矢崎節夫館長コラム 「蛙」 2020年6月1日
蛙
憎まれっ子、
憎まれっ子、
いつでも、かつでも、誰からも。
雨が降らなきゃ、草たちが、
「なんだ、蛙め、なまけて。」と、
それをおいらが知る事か。
雨が降り出しゃ子供らが、
「あいつ、鳴くから降るんだ。」と、
みんなで石をぶっつける。
それがかなしさ、口おしさ、
今度は降れ、降れ、降れ、となく。
なけばからりと晴れあがり、
馬鹿にしたよな、虹が出る。
「金子みすゞ童謡全集」JULA出版局
みすゞさんの『蛙』の後半の二行を読むと、落語だなぁと思わず笑いたくなります。
落語家の桂枝省さんは「雨乞い源兵衛」のまくらで、「人間が人間をやっているのはついこの間で、天気は地球ができた時からずっと天気をやっているので、当たる訳がないのであります」と語っていますが、人間だけでなく、蛙だってそうなのです。それを、石をぶつけられてはたまりませんね。
みすゞさんは落語を聴いたことはなかったのではと思うのですが、仙崎は豊かな漁師町で、芸事も盛んな土地でしたので、おもしろい小唄などは耳にしていたかもしれません。
それでも、みすゞさんがゆかいで、楽しい作品を書けたのは、みすゞさん自身がまわりの全てを、やわらかい、深いまなざしで見続けたからにちがいありません。
待ちにまった記念館の再開もできました。
少しでもみなさんのホッとできる場所でありたいと、館員一同心よりお待ちしています。
令和2年6月1日
金子みすゞ記念館 館長 矢崎 節夫