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矢崎節夫館長コラム 「赤い靴」 2020年3月1日
赤い靴
空はきのうもきょうも青い、
路はきのうもきょうも白い。
溝のふちにも花が咲いた、
小さいはこべの花が咲いた。
坊やもべべがかろくなって、
一足、二足、あるき出した。
一足踏んでは得意そうに、
笑う、笑う、声を立てて。
買ったばかしの赤い靴で、
坊や、あんよ、春が来たよ。
「金子みすゞ童謡全集」JULA出版局
「赤い靴」を読むと、幼いふうちゃんで心をいっぱいにしているみすゞさんの姿が目に見えるようです。
“空はきのうもきょうも青い、/路はきのうもきょうも白い。“みすゞ晴れで、黒い土も表面が乾燥して、白く見えるのですね。
坊やはもちろん、愛児のふうちゃん。
でも、ふうちゃんにすると個人的な作品になるので、ここでは一般的な「坊や」とうたっているのです。
まど・みちおさんは、詩は「自分の中の自分」で書き、童謡は「自分の中のみんな」で歌うと教えてくださいましたが、「坊や」にしたのは、まさにこの「自分の中のみんな」で歌ったからです。誰にも教えられなくとも、この事が出来たみすゞさんはすごいですね。
3月10日で、没後90年を迎えます。
今年はかわいい絵本や英語の絵本も、次々と出版されるようです。どうぞお楽しみに。
体調に気をつけ、よい春をお迎えください。
令和2年3月1日
金子みすゞ記念館 館長 矢崎 節夫