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矢崎節夫館長コラム 「もういいの」 2020年2月1日
もういいの
――もういいの。
――まあだだよ。
枇杷の木の下と、
牡丹のかげで、
かくれんぼの子供。
――もういいの。
――まあだだよ。
枇杷の木の枝と、
あおい実のなかで、
小鳥と、枇杷と。
――もういいの。
――まあだだよ。
青い空のそとと、
黒い土のなかで、
夏と、春と。
「金子みすゞ童謡全集」JULA出版局
暖冬といっても、寒いと身をちぢめる日が続きます。きっと今、お空のそとと、黒い土のなかで、冬と春が、「もういいの」「まあだだよ」と声をかけあっているのでしょう。
記念館では、みすゞさんが童謡を書いていた大正後期から昭和初期の全国の童謡同人誌を収集していて、大竹一三コレクションを中心に51種類110冊があります。同人誌は古書店に出る機会がなかなかない中で、先日、神田神保町のけやき書店に、昭和7年「チクタク」1号が出品されているのがわかり、入手したのですが、この時、ご主人に「金子みすゞ記念館に行ったことがあります。なかなかいい、楽しい展示でした」とほめていただいて、欲しい同人誌と共に、二重の倖せでした。
展示をほめていただけた中には、受付けや館の人たちの対応も良かったのでしょう。
これからも大切にお迎えしたいと思います。
お手元に、昔の童謡同人誌をお持ちの方がいらっしゃいましたら、ぜひご連絡いただけると幸いです。
令和2年2月1日
金子みすゞ記念館 館長 矢崎 節夫