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矢崎節夫館長コラム 「曼珠沙華」 2019年10月1日
曼珠沙華(ひがんばな)
村のまつりは
夏のころ、
ひるまも花火を
たきました。
秋のまつりは
となり村、
日傘のつづく
裏みちに、
地面のしたに
棲むひとが、
線香花火を
たきました。
あかい
あかい
曼珠沙華
「金子みすゞ童謡全集」JULA出版局
今年は例年よりひがんばなの開花が遅かったようで、九月末の長門のあぜ道はまっ赤なひがんばなが見事に咲いてました。
そこで十月の詩は、「曼珠沙華」です。
みすゞさんはこの曼珠沙華に「ひがんばな」とふりがなをふって歌っています。
” 地面のしたに/棲むひとが、/線香花火を/たきました。”
地面の下に住む人ですから、当然、この世の人ではありませんが、それでもひがんばなに彼岸花と書かずに、曼珠沙華という字を当てはめた、みすずさんの心柄が見えるようです。あでやかな赤色の花を、あでやかなままに呼んであげたかったのでしょう。
そういえばみすずさんが佐藤義美(犬のおまわりさんやグッバイの詩人)氏に誘われて、大正十四年に参加した童謡同人誌の名前も、「曼珠沙華」でした。
秋は赤や黄色など色彩豊かな季節です。どうぞよい十月をお過ごしください。
令和元年10月1日
金子みすゞ記念館 館長 矢崎 節夫