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矢崎節夫館長コラム 「花津浦」 2019年8月1日
花津浦
浜で花津浦眺めてて、
「むかし、むかし」と
ききました。
浜で花津浦みる度に、
こころさみしく
おもい出す。
「むかし、むかし」と
花津浦の
その名の所縁きかされた
郵便局の小父さんは、
どこでどうしているのやら。
あのはなづらの
はな越えて、
お船はとおく
消えました。
いまも、入日に海は燃え、
いまもお船は沖をゆく。
「むかし、むかし」よ
花津浦よ、
みんなむかしになりました。
「金子みすゞ童謡全集」JULA出版局
突然暑くなって、海が恋しい八月です。
仙崎には駅を背に、右に仙崎湾、左に深川湾があります。仙崎湾は漁船や観光船、海上保安庁の巡視船を見ることができますが、深川湾はさわやか海岸と呼ばれる砂浜があります。そこでよく私は小さい貝をひろうのですが、ここからは、みすゞさんが郵便局のおじさんに所縁をきいた、“花津浦”がとてもよく見えます。――ああ、みすゞさんもこうして眺めたんだなぁと、心がいっぱいになります。
記念館の八月の企画室は新人二人の学芸員による「仙崎八景展」です。みすゞさんの詩と共に、当時の写真と現代の写真と解説を入れたもので、二人共県外からの学芸員なので、初めて見た八景の魅力を大いに伝えてくれるものになっています。
全国のお客さまだけでなく、長門の人にも新しい八景の魅力に出逢える企画です。
どうぞ どうぞおでかけくださいますように、館員一同心よりお待ちしています。
令和元年8月1日
金子みすゞ記念館 館長 矢崎 節夫