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矢崎節夫館長コラム 「ぬかるみ」 30年11月1日
ぬかるみ
この裏まちの
ぬかるみに、
青いお空が
ありました。
とおく、とおく、
うつくしく、
澄んだお空が
ありました。
この裏まちの
ぬかるみは、
深いお空で
ありました。
「金子みすゞ童謡全集」JULA出版局
「ぬかるみ」の中でみすゞさんは、”この裏まちの/ぬかるみに、/青いお空が/ありました。”とうたっています。だから、雨が止んで青空が広がると、つい水たまりを覗きたくなります。
アスファルトの道なので、ぬかるみにはなりませんが、きらりと光ったりしているとうれしくなります。
”この裏まちの/ぬかるみは、/深いお空で/ありました。”
ぬかるみはどろできたないと思っている私たちの常識を、みすゞさんは見事にひっくり返してくれます。そして、大事なことを気づかせてくれます。大切な存在は遠くにあるものではなくて、自分の目の前にちゃんと存在しているのだと。それを見つけるのは、誰でもない、あなた自身だとです。
11月は青空の多い季節です。落ち葉も足もとで遊びます。みなさんにとって、よい11月でありますように。
平成30年11月1日
金子みすゞ記念館 館長 矢崎 節夫