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矢崎節夫館長コラム 「日の光」 30年10月1日
日の光
おてんとさまのお使いが、
そろって空をたちました。
みちで出逢ってみなみ風、
なにしにゆくの、とききました。
ひとりのお使いいいました、
「ひかりの粉を地に撒くの、
みんながお仕事できるよう。」
ひとりはほんとに嬉しそう、
「私はお花を咲かせるの、
世界をたのしくするために。」
ひとりのお使いやさしい子、
「私は清いたましいの、
のぼる反り橋かけるのよ。」
残ったひとりは寂しそう、
「私は、影をつくるため、
やっぱり一しょにまいります。」
「金子みすゞ童謡全集」JULA出版局
先日、榛名湖で若い二人連れのうちの男の子が、女の子に太陽を背にしてかげおくりを教えているのに出会いました。
「こうして自分の影をじっと見て、1、2、3と10数えて、さっと青空を見上げると、自分の影が空にうつるんだよ」
あまんきみこさんの「ちいちゃんのかげおくり」は小国の教科書に載っているので、たくさんの子が知っていて、やっています。
でも、目の前で若い二人がかげおくりをやっているのを見たのは、初めてでした。
「ちいちゃんのかげおくり知ってるの」と思わず声をかけると、「はい」と男の子から明るい返事が返ってきて、自分のことのようにうれしくなりました。
”残ったひとりは寂しそう、/「私は、影をつくるため、/やっぱり一しょにまいります。」”
一しょにきてくれたおかげで、かげにもうれしいかげも、楽しいかげもあるのですね。
10月の青空に、ぜひかげおくりをどうぞ。
平成30年10月1日
金子みすゞ記念館 館長 矢崎 節夫