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矢崎節夫館長コラム 「私の髪の」 30年5月1日
私の髪の
私の髪の光るのは、
いつも母さま、撫でるから。
私のお鼻が低いのは、
いつも私が鳴らすから。
私のエプロンの白いのは、
いつも母さま、洗うから。
私のお色が黒いのは、
私が煎豆たべるから。
「金子みすゞ童謡全集」JULA出版局
「私の髪の」を読むと、軽やかに生きることがみすゞさんは上手だなと思います。
”私のお鼻の低いのは、/いつも私が鳴らすから。””私のお色が黒いのは、/私が煎豆たべるから。”とうたっています。
私たちは大抵、うれしいことは自分の力、うれしくないことは人のせいにしがちですが、みすゞさんは違います。
うれしくないことでも、一度、ぽんと紙風船のように空に打ち上げて、見上げた青空のように広々としたこころで、落ちてきた紙風船を受け止めるから、楽しく、ゆかいに受け止めることができるのです。一回だめなら、二回も、三回も、紙風船にして打ち上げればいいのです。
気持ちのいい五月です。もしうれしくないことがあったら、紙風船にして空に打ち上げましょう。うれしいことなら、もっともっと打ち上げて、うれしさを何倍にもしましょう。
みすゞ晴れの青空が待っていますから。
平成30年5月1日
金子みすゞ記念館 館長 矢崎 節夫