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矢崎節夫館長コラム 「お嬢さん」 29年11月1日

ページID:0020737 更新日:2017年10月1日更新 印刷用ページを表示する

お嬢さん

 

道を教えた旅びとは、

とうにみえなくなったのに、

私はとぼんとしていたよ。

 

いつも私のかんがえる、

あのおはなしのお国では、

お姫さまともよばれても、

あたしは貧乏な田舎の子。

 

「お嬢さん、ありがとう。」

そっとあたりをみまわして、

なにかふしぎな気がするよ。

                               「金子みすゞ童謡全集」JULA出版局

 

 

 子どもの頃、近所にきこえるくらいに大きい声で、「行って帰りやす」「行って帰りやした」というおじいさんがおられました。

 「行ってきます」「ただいま」より、ずっと心が込もっているようで、小さい声でまねをすると、「はい。しっかり帰ってきてください」と母ににこにこといわれました。

「お嬢さん、ありがとう。」

 思いもかけない言葉に出合って、“私はとぼんとしていたよ。”“そっとあたりをみまわして、/なにかふしぎな気がするよ。”の少女の思わぬ倖せな気持がわかります。

 言葉は、使う人の心柄が表われるのですね。

 そして、言葉は最初にきくのは自分です。心柄の表われるうれしい言葉を使ってくれると、まず自分自身が倖せになり、きく人は森林浴以上の言葉浴に出合って、何倍も倖せになれるのです。

 寒い日が続きますが、うれしい言葉で自分もまわりの人も心あたたかくお過ごし下さい。

 

平成29年11月1日

金子みすゞ記念館 館長 矢崎 節夫


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