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矢崎節夫館長コラム 「見えないもの」 29年10月1日

ページID:0020542 更新日:2017年10月1日更新 印刷用ページを表示する

見えないもの

 

ねんねした間になにがある。

 

うすももいろの花びらが、

お床の上に降り積り、

お目々さませば、ふと消える。

 

誰もみたものないけれど、

誰がうそだといいましょう。

 

まばたきするまに何がある。

 

白い天馬が翅のべて、

白羽の矢よりもまだ早く、

青いお空をすぎてゆく。

 

誰もみたものないけれど、

誰がうそだといえましょう。

 

                               「金子みすゞ童謡全集」JULA出版局

 

 雑然とした騒々しい日々の中で、でも、みすゞさんの『見えないもの』を読むと、ポッとするのは、私たちが気づかずに通り過ぎている一瞬一瞬にも、すてきなことが起きているのだと信じられるからでしょう。

 「まばたきするまに何がある。」、まばたきする間とは、100~150ミリ秒ということだそうで、そんなわずかの時でも、「うすももいろの花びらが、/お床の上に降り積り、」「白い天馬が翅のべて、/白羽の矢よりもまだ早く、」と、すてきなことが起きているのです。

 みすゞさんのこのまなざしさえあれば、どんなに混沌とした時代でも、絶望することはありませんね。

 ちょっとうれしいお知らせを一つ。倉本美津留、RAM RIDER、増田セバスチャンという若いアーティストの三人が、みすゞコスモスの旅を始められました。お楽しみに!

 みなさん、よい秋をお迎え下さい。

 

平成29年10月1日

金子みすゞ記念館 館長 矢崎 節夫


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