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矢崎節夫館長コラム 「見えないもの」 29年10月1日
見えないもの
ねんねした間になにがある。
うすももいろの花びらが、
お床の上に降り積り、
お目々さませば、ふと消える。
誰もみたものないけれど、
誰がうそだといいましょう。
まばたきするまに何がある。
白い天馬が翅のべて、
白羽の矢よりもまだ早く、
青いお空をすぎてゆく。
誰もみたものないけれど、
誰がうそだといえましょう。
「金子みすゞ童謡全集」JULA出版局
雑然とした騒々しい日々の中で、でも、みすゞさんの『見えないもの』を読むと、ポッとするのは、私たちが気づかずに通り過ぎている一瞬一瞬にも、すてきなことが起きているのだと信じられるからでしょう。
「まばたきするまに何がある。」、まばたきする間とは、100~150ミリ秒ということだそうで、そんなわずかの時でも、「うすももいろの花びらが、/お床の上に降り積り、」「白い天馬が翅のべて、/白羽の矢よりもまだ早く、」と、すてきなことが起きているのです。
みすゞさんのこのまなざしさえあれば、どんなに混沌とした時代でも、絶望することはありませんね。
ちょっとうれしいお知らせを一つ。倉本美津留、RAM RIDER、増田セバスチャンという若いアーティストの三人が、みすゞコスモスの旅を始められました。お楽しみに!
みなさん、よい秋をお迎え下さい。
平成29年10月1日
金子みすゞ記念館 館長 矢崎 節夫