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矢崎節夫館長コラム 「花屋の爺さん」 28年10月1日
花屋の爺さん
花屋の爺さん
花売りに、
お花は町でみな売れた。
花屋の爺さん
さびしいな、
育てたお花がみな売れた。
花屋の爺さん
日が暮れりゃ、
ぽっつり一人で小舎のなか。
花屋の爺さん
夢にみる、
売ったお花のしやわせを。
「金子みすゞ童謡全集」JULA出版局
『花屋の爺さん』を読むと、ほっこりとあたたかい気持ちになります。
花屋の爺さんの夢に見る花のしあわせとは、花だけのしあわせではありません。花を買った人が、または、花を見た人がしあわせになってくれないと、花のしあわせはありませんね。
このしあわせは、人偏のついた「倖せ」、しあわせのこだまし合いです。
アメリカのチン・ミュージック・プレスから、みすゞさんのオリジナル絵本『ARE YOU AN ECHO?(こだまでしょうか)』が出版されました。前半は私が『大漁』に出合い、三冊の手帳に辿り着き、弟の雅輔さんから知ったみすゞの生涯、更に東日本大震災に時に、『こだまでしょうか』が日本中を励ましたことなど、英語圏の子どもたちに是非伝えたいと願ったデイヴィッド・ジエコブソンさんの文章で、紹介されています。後半は日系カナダ人のサリー・イトウさんとおばの坪井美智子さんの訳した詩で構成され、挿絵は画家の羽尻利門さんによる一冊です。
この本の中でデイヴィッドさんは、「みすゞさんの詩が広く人々の心に広がった、そのヒントがここにある」として、『花屋の爺さん』を載せています。
みすゞさんの「倖せ」が、世界の人々に広がっていくといいですね。
※絵本はJULA出版局で求められます。
平成28年10月1日
金子みすゞ記念館 館長 矢崎 節夫