本文
矢崎節夫館長コラム 「花のお使い」 28年9月1日
花のお使い
白菊、黄菊、
雪のような白い菊。
月のような、黄菊。
たあれも、誰も、みてる、
私と、花を。
(菊は、きィれい、
私は菊を持ってる、
だから、私はきィれい。)
叔母さん家は遠いけど、
秋で、日和で、いいな。
花のお使い、いいな。
「金子みすゞ童謡全集」JULA出版局
朝夕にふと秋隣を感じられるようになりましたが、日中はまだ暑い日が続きます。
みなさんおかわりありませんか。
『花のお使い』の中で、みすゞさんはかわいい三段論法を使っています。三段論法とは二つの条件があって、結論が生まれる議論法で、大津高女の授業で習ったのでしょう。
(菊は、きィれい、/私は菊を持ってる、/だから、私はきィれい。)
「菊はきれい」という条件と、「私は菊を持っている」という条件があって、「だから、私はきれい」という結論が生まれたのです。
みすゞさんはこの詩を書く時、声に出して書いたのです。だから、「きれい」ではなく、「きィれい」となっているのですね。
「秋で、日和で、いいな。/花のお使い、いいな。」
野の花一輪でもいいので、花のお使いしてみませんか。だから、私はきィれいと、自分で自分をたくさんほめてあげてください。
平成28年9月1日
金子みすゞ記念館 館長 矢崎 節夫