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矢崎節夫館長コラム 「私の髪の」 28年6月1日
私の髪の
私の髪の光るのは、
いつも母さま、撫でるから。
私のお鼻の低いのは、
いつも私が鳴らすから。
私のエプロンの白いのは、
いつも母さま、洗うから。
私のお色の黒いのは、
私が煎豆たべるから。
「金子みすゞ童謡全集」JULA出版局
みすゞさんの『私の髪の』を読むと、心がほっかりします。
「私のお鼻が低いのは、/いつも私が鳴らすから。」「私のお色の黒いのは、/私が煎豆たべるから。」
本当は、「お父さんに似てるから」とか、「お母さんに似てるから」と、自分の両親のせいにしがちなのに、みすゞさんは楽しく歌っているからです。
欠点をいわれたり、いやなことがあったり、なかなか自分のことを分かってもらえなかったりで、ついすべてをどんと受け取って、落ち込んだり、不満をぶつけたりしがちですが、みすゞさんはどんと受け取らずに、すうっと受け流して、その上で、自分らしい答えを足して、楽しい方向に向けることが出来た、生き方の名人なのかもしれませんね。
うれしいことはみんなで、そうでないことはすうっと流して楽しいことに変えられる、そんなことの出来る人になりたいですね。
平成28年6月1日
金子みすゞ記念館 館長 矢崎 節夫