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矢崎節夫館長コラム 「こわれ帽子」 29年9月1日

ページID:0020074 更新日:2017年9月1日更新 印刷用ページを表示する

こわれ帽子

 

てんてん手毬、

おててん手から、辷ってころげて、

乞食の子供にひろわれた。

 

手まりは欲しし、怖さは怖し、

睨みゃ、睨んでほうってくれて、

 

行くか、帰るか、あち向きかけて、

麦藁帽子をすぽりとかぶりゃ、

すぽり、こわれた、こわれた、帽子、

つばがすぽりとくびまで抜けた。

 

くるり、ふりむき、アハハと笑うた、

私もうっかり、アハハと笑うた。

 

こわれ帽子の、そのゆくみちにゃ、

とんぼ、千も万も舞い舞いしてた。

 

                               「金子みすゞ童謡全集」JULA出版局

 

みすゞさんの『こわれ帽子』を読むと、チャップリンの映画を見ているような、ゆかいで楽しい気持ちになります。

遊んでいた手まりが、ころげて、ひろわれたのです。「手まりは欲しし、怖さは怖し、/睨みゃ、睨んでほうってくれて、」で、女の子と男の子の緊張した空気が分かります。

男の子は一緒に遊びたいけど、そうもいかず、「行くか、帰るか、あち向きかけて、」、自分の気持ちを振り払うように、麦藁帽子をすぽりとかぶったのです。

その瞬間、「すぽり、こわれた、こわれた、帽子、/つばがすぽりとくびまで抜けた。」のです。そのおかしさで、ふたり共、アハハと笑ってしまったのです、どんなにふたりがゆかいな気持ちになったかは、「とんぼ、千も万も舞い舞いしてた。」でよく分かります。

暑さがまだ残り、夏の疲れもでる九月です。

『こわれ帽子』を読んで、アハハと笑って、元気になってくださったらうれしいです。

 

平成29年9月1日

金子みすゞ記念館 館長 矢崎 節夫


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